ダメージを残したデニムの裾上げの方法

ジーパンの裾上げを依頼されて、今回やってみたのは「アタリ残し」という方法です。
アタリとは、ヴィンテージデニムとか、ジーンズのダメージ加工などの独特の白い色落ちのことです。アタリは古着の持ち味のひとつなので、裾直しを普通に切って三つ折りでしてしまうと、裾の端がつるんとなってこなれた風合いがなくなってしまうんです。
使い込んでいくうちにオリジナルのアタリはできてくるのですが、全体がダメージ加工なのに裾だけつるんと新しい感じだとバランス悪く感じてしまう、こだわりのお洒落さんは「アタリ残し」という方法で裾直しを希望されます。

デニムの裾上げ方法の違い

三つ折りの裾上げ
こちらが一般的な裾上げ方法です。出来上がりの長さのプラス2~3cmで切って、端を三つ折りにして、ミシンでステッチをかけるやり方です。デニムの中でもアタリが目立たない、色の薄いデニムはこの方法でもそれほど気にならないと思います。お直し屋さんに頼む場合も一般的な裾上げの方法のほうがリーズナブルですよ。
ジーパンの裾
内側はこんなかんじです。すっきりとした始末なので、裾をロールアップして着るならこちらの一般的な方法のほうが、個人的にはいいと思います。

アタリ残しとは
こちらがアタリ残しで裾上げをしたデニムです。
白いダメージになっている部分がアタリです。濃い色のデニムだとはっきりとコントラストが出るので、これが味になるんですよね。切り落としてしまいたくないという場合は、アタリ残しの方法で裾直しをします。
元の裾のステッチは残したまま、その上に1本ステッチをいれなければならないのですが、目立たないように黒に近い紺の糸でステッチを入れています。

裾上げの長さの計算方法

パンツの裾上げをするときは、まず履いてもらって、出来上がりの長さにしたいところで折ってマチ針で留めます。
三つ折りでお直しする場合は、出来上がりの長さプラス2~3cmでカットします。薄い生地のパンツだと2cmでもいいのですが、デニムなどだと生地の厚みがあるのでそこも考慮してカットしてください。
アタリ残しの場合は履いてもらって出来上がりの長さでマチ針を留めるところまでは同じです。折った長さを定規などで測ります。今回のパンツは14cmでした。
アタリ残しの計算方法
もともとの裾のステッチは、モノによって多少違うので毎回測ったほうがいいですが、ステッチより少し上くらいが見えるように残すので、その長さを測ります。ここでは1.2cmでした。
裾の長さ
折り曲げたい長さ ÷ 2 + 残す長さ = X
このXの長さになるように裾を外側に折ります。
今回の場合だと14÷2+1.2cm=8.2cmです。

アタリ残しの縫い方

アタリ残しの縫い方
元の三つ折りの際をぐるりと一周縫っていきます。
コンシールファスナー押さえ
ミシンの押さえ金をコンシールファスナー押さえに替えます。

本来はコンシールファスナーをつける時に使うアタッチメントなのですが、この押さえ金を使うと端っこギリギリを縫うことができます。

デニムを縫う時は、ミシン針も必ず厚地が縫える太い針に替えておきましょう。普通時用のままだと針が折れてしまいます。
境目の縫い方
ミシンをフリーアームにすると筒状のものを縫う時に便利です。
元の三つ折りとの境目を一周ぐるりと縫っていきます。
段差をなくす縫い方
厚物が縫えるミシンでも、ジーンズの縫い代が重なり合う部分を縫う時に苦戦する場合があります。分厚くなっているところでどうしても段差ができてしまいます。段差を乗り越えようとして押さえ金が斜めになった状態だと、うまく布を後ろに送ることができず針が前に進まなくなってしまいます。
そんなときは、その段差と同じくらいの厚紙などをミシンの押さえ金の後ろにかませます。そうすることで、斜めだった押さえ金が平らになり、うまく前に進んでくれますよ。
ジーパンの裾の縫い方
一周ぐるりと縫えました。
デニムの裾の内側
内側はこんな風になっています。このままでも外から見る分には大丈夫ですが、実際脱ぎ履きするときに縫い代が邪魔になってくるので後で始末しますね。
裾にアイロンをかける
縫い代をおさえるためのステッチをかけるので、マチ針でところどころ縫い代ごと留めていき、アイロンで整えます。

あっちゃんウインク
こういうアイロン、ちょっぴり面倒だけどかけておいたほうが仕上がりがキレイです。
ブラインドステッチ押さえ

デニムの色と似ている色の糸に替え、コバステッチをしていきます。
押さえ金をコバステッチ押さえやブラインドステッチ押さえに替えるとまっすぐ縫いやすいですよ。

押さえ金、いろいろ使う人はこういうセットもいいかもしれません。私ももっているけど使うのは限られていますが。
ミシンの設定
使っているミシンによって設定の仕方が違うと思うので参考までですが、縫い目の長さを3mmにして縫います。
コバステッチ
端から2mmくらいのところを一周ぐるりと縫います。押さえ金で一定の幅で縫えるのでミリ単位でもまっすぐ縫えますよ。
表からコバステッチ
縫い終わりました。表から見える分には完成ですが、たくさん曲げているので内側の縫い代が脱ぎ履きするときに邪魔になるので内側も始末します。それほど縫い代がない場合はこのまま完成でも大丈夫。

縫い代の始末の仕方

縫い代の長さを測る
三つ折りの端から1.5~2cmほど残してあとは切り落とします。定規で測りながら、チャコペンなどでマークを付けて行きます。

スライドゲージはこういう時、本当に便利。
切り落とすのでチャコエースでなくてもいいのですが後で消えるペンなのでこちらも便利です。
縫い代を切る
マークを付けたところを目安に、余分な縫い代をハサミで切り落とします。
ロックミシン
切った端がほつれないようにロックミシンまたはジグザグミシンをかけていきます。
ジーパンの端をロックミシン
ぐるりと一周端の始末ができました。
ジーパンの裾上げ
縫い代が内側になるように整えたら、アタリ残しの裾上げの出来上がりです。

あっちゃん笑顔
反対側の足も同じように始末してね!